ガン予防 富田勲(とみたいさお)静岡県立大学薬学部教授研究
・・・・・・・緑茶の超薬効レポート・・・・・
富田勲(とみたいさお)
静岡県立大学薬学部教授
1932(昭和7)年、富山県生まれ。
大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了、薬学博士。
日本食品衛生学会常任理事。
緑茶の機能についての研究を長年続けておられる。
★お茶を飲んで積極的にガン予防
ガンで死亡する人の数は、年々ふえています。
病死した日本人のうち、四人に一人がガ ンで亡くなっている計算になるほどです。
ガンは生活習慣病と呼ばれるほど、その人の 食生活と密接に結びついています。
タバコの吸いすぎやアルコールの飲みすぎ、塩分のとりすぎなどが大きな原因となることはご存じでしょう。
ガンを予防するには、まずマイナスの生活習慣を軌道修正し、ガンにかかりにくい体にする”プラスの生活習慣”に変え ることが必要です。
β-カロチン(体内でビタミンAに変わる色素)を豊富に含む緑黄色 野菜を積極的に食べることも、ガンを防ぐ食生活の一つです。
こうした、いわば〃攻め 〃のガン予防法として世界的に脚光を浴びているのが、「緑茶でガンを防ぐ」方法です。
●緑茶の大産地である静岡県では、ガン死亡率が全国平均を二○%も下回っている(小國 伊太郎・静岡県立大学短大部教授らの調査による(オグニイタロウ))
●緑茶を一日三杯以下しか飲まない男性に比ベ、一○杯以上飲む男性は三歳、女性では九 歳も平均年齢が伸び、発ガン年齢も遅い(今井一枝・埼玉県立がんセンター研究所専門研 究員らの調査による)など、緑茶のガン予防効果を示す調査が数多く発表されています。
これまでお茶といえば紅茶を指していた欧米人の間でも、「緑茶を飲む習慣」が非常に 効果の高いガン予防法であると、国際的な学会などで発表されて以来、健康食品としての 緑茶に高い関心が集まるようになっています。
★ガン抑制のカギ緑茶の”カテキン”
現在、ガンの原因となるのは「活性酸素」と呼ばれる物質であるという説が有力です。
活性酸素は、ペアになっていない電子がついているために不安定で、自らを安定させる ために常に他の分子と反応したがる性質をもっています。
その反応によって相手の分子を 傷つけ、本来の性質を失わせてしまうという、生体内の厄介者といった存在です。
ガン は、正常な細胞の遺伝子(DNA)の分子がこの活性酸素で傷つけられて発生すると考えられています。
この活性酸素の害を中和する効果が高いものを抗酸化物質といいますが 、
緑茶に多く含まれている「カテキン」は、たいへん強力な抗酸化物質なのです。
緑茶に は、渋みの成分である六種類のカテキン類が、一○○gあたりおよそ一五g程度含まれて います。
これらのカテキン類のなかでも、とくにガン抑制力が強いのがエピガロカテキ ンガレート(EGCG)と呼ばれるカテキンです。
私たちはラット(実験用シロネズミ )を使った実験で、MNNG(動物で胃ガンを高率に発症させることが証明されている薬 物)の突然変異誘発に、EGCGを含む緑茶抽出物が、どの程度有効に作用するのか検討 しました。
その結果は、ラットにMNNGと緑茶抽出物を同時に与えた場合よりも、MNNGを与える一○分前に緑茶抽出物を与えたほうがMNNGの作用を抑える効果が高いことがわかりました。
近年、MNNGとよく似たニトロソ化合物であるENNCやNDEA、MNU、あるいはNNK(タバコの煙に含まれる発 ガン物質)といった発ガン物質を使った、マウス(実験用ハツカネズミ)やラットのいろいろな臓器でガンを発生させる実験においても緑茶の抽出物あるいはEGCGの効果を調べた研究結果が続々と報告されています。
それらによりますと、実験条件による若干の 違いはあるものの、いずれも「たいへん有効」という結果でした。
しかも、有効であった 組織・臓器は、皮膚、胃、小腸、十二指腸、大腸、すい臓、肝臓、乳腺、肺など、実に九 種類に及んでいます。
★緑茶を食べてもガン予防に効果的
緑茶のガン抑制力は、カテキンだけによるものではありません。
カテキン以外にも、多 糖類(糖類で分子の数が多いもの)や、緑茶のうまみ成分であるテアニン、CやEなどの ビタミン類など、緑茶の各種成分も相乗的に働くと考えられています。
とくに、緑茶に 豊富に含まれるカロチン(α、β)は、見逃すことができません。
たとえば抹茶には、一 ○○gあたり三mmg近いカロチンが含まれています。
これはニンジン、ホウレンソウな どカロチンが多いとされる緑黄色野菜に含まれる量の三~四倍に当たります。
ガンなど の成人病予防には、一日六mmg以上のカロチン摂取が望ましいとされていますが、抹茶な らスプーン一杯(三g強)で一mmgのカロチンをとることができます。
これなら手軽な 方法ですから、野菜の摂取と、うまく組み合わせるとよいでしょう。
ただしお茶に含ま れるカロチンは、お湯や水には溶け出てきません。
茶葉ごと飲んでしまう抹茶や、直接茶 葉を食べるといった方法がべストです。
カテキン類はお湯に溶けるので、お茶でも抽出 できます。
しかし、溶け出る量は少ないので、ガン予防として充分な量をとるためには、一日一○杯以上は飲むようにしたいものです。
最近はこれらの点が配慮された粉末茶も市販されています。
これは各種の有効成分をむだなくとることができる優れた方法 といえます。茶葉を使う料理法もいろいろあります。
葉を直接食べるのですから、抗ガン 効果は非常に高いといえます。
○緑茶のもつ強い殺菌効果でカゼを予防し悪化を防ぐ縁茶うがい
カゼを予防するためには、うがいが有効な方法です。
そして、水よりも縁茶のほうがさ らに効果的です。
これは縁茶の有効成分であるカテキン(タンニン。渋み成分)の殺菌効 果によるものです。
カテキンの殺菌効果は強く、のどの粘膜についたインフルエンザウイルスでさえも殺してしまうほどです。
ですから、カゼの予防はもちろん、カゼをひいた あとでも悪化をくい止めることができるのです。
とくに、鼻カゼやのどが痛いときにおす すめです。
縁茶うがいは次のようにやります。
ふだん飲んでいるお茶の半分程度の濃さ のお茶を人肌程度(三六度ぐらい)まで冷まし、それがのどの奥まで行き渡るようにうがいをします。